はじめに
今日、顧客は、関連性が高く、高度にパーソナライズされ、自分のニーズや選好を反映したコミュニケーションを期待しています。また、コミュニケーションには好きなデバイスからオンデマンドでアクセスできることを望んでいます。
優れたカスタマーエクスペリエンスを提供する上で、企業の顧客とのコミュニケーション方法は大きな要因となります。そのため、あらゆる企業がカスタマーコミュニケーション管理(CCM)を重点領域とすべきです。
ただ、カスタマーコミュニケーション管理とは具体的にどのようなもので、なぜビジネスにとって重要なのでしょうか。
カスタマーコミュニケーション管理の定義
公益事業会社から届く請求書や銀行から届くクレジットカード明細書などのコミュニケーションは単純そうに見えます。しかし、実際にはその設計と提供は複雑です。
これらのコミュニケーションには、以下のさまざまなシステムからの情報が含まれます。
- 顧客関係管理(CRM)システムからの顧客データ
- マーケティングプラットフォームからのマーケティングメッセージ
- エンタープライズリソース計画(ERP)システムからの財務情報
- デジタル資産管理プラットフォーム(DAM)からのブランドアセット
- 法務システムなどからの利用規約
高度なカスタマーコミュニケーション管理ソリューションは、エンタープライズシステムに接続します。顧客データを一元化されたコンテンツマネージャーへと合理化し、その結果顧客にシームレスな体験をもたらします。
オムニチャネル CCM ソリューションは印刷物にとどまりません。1つのマスターデザインが、同期・ブランディングされ、すぐに利用可能な、印刷物、デジタル、モバイルコミュニケーションに変換されます。これにより、数百万件のパーソナライズされたコミュニケーションを数時間で作成したり、要求に応じてオンデマンドで作成することが可能となり、こうした内容はすべて将来活用できるように自動でアーカイブされます。
CCM を使えば、ドキュメントのメンテナンスがスピーディかつ簡単になります。複雑なビジネスでは、ブランディングコンテンツや規制言語などを始め、カスタマーコミュニケーションにおけるすべての情報は別々のチームによって管理されています。
ここで力を発揮するのが CCM です。各コンテンツの所有者を明確にすることで、チームメンバーはテキスト、画像、グラフやデータを更新できるようになります。更新された変更は迅速に本番環境にプッシュされ、すべての変更は顧客へ届ける前に正確性を確保するため、堅牢な承認プロセスによって管理されます。
カスタマーコミュニケーション管理ソリューションは、既存のシステムの能力を拡張します。顧客データを活用して、1つの集中型コミュニケーションプラットフォームからチャネル全体に対して規制を遵守し、高度にパーソナライズされたコミュニケーションを作成します。
カスタマーコミュニケーション管理が重要な理由
カスタマージャーニー全体で顧客向けコミュニケーションを最適化するには、効果的なコミュニケーション管理戦略の立案が重要となります。顧客はシームレスで対話的な体験を高く評価します。企業は、メールやSMS、ソーシャルメディアに至るまで、さまざまなコミュニケーションチャネルを用意しています。
CCM は、顧客とのコミュニケーションの設計と配信の効率を高めるための強力なツールで、企業が顧客との関わりを深め、最終的に顧客との関係を強化するのに役立ちます。
カスタマーコミュニケーション管理の利点
一元化された CCM ソリューションの採用には企業にとってさまざまなメリットがありますが、CCM に関する議論は難しくなりがちです。そうした議論を分解してわかりやすくしてみましょう。ここでは、CCM がビジネスに役立つ基本的な4つの利点に焦点を当てます。
- カスタマーエクスペリエンスを改善
リアルタイム、クロスチャネル、インタラクティブなコミュニケーションを可能にする一元化された CCM プラットフォームなら、カスタマーエクスペリエンスは劇的に向上します。以下の方法でこれを達成することができます。
パーソナライゼーションとチャネル選好
主要 CCM ソリューションは、顧客と企業のやり取りするほぼすべてのチャネルにわたり、高度にパーソナライズされ、関連性の高いコミュニケーションの作成を容易にします。さらに、CCM チャネル選好管理ツールを使用すると、顧客が望むチャネル経由で顧客と確実にやり取りすることができます。
インタラクティブ性
インタラクティブなチャート、グラフやスライダーなど、動的な視覚化を活用したコンテンツを通じたモバイル・ウェブ体験を容易に作成できます。
一貫性
コンテンツのデザインはチャネルに依存しない方法で作成され、顧客の好むチャネル経由で顧客にプッシュされるため、一元化によってカスタマーエクスペリエンスが向上します。一貫性のあるメッセージは、一貫性のある体験を提供し信頼を築きます。信頼はロイヤルティ向上につながります。
利便性
一元化された CCM プラットフォームにより、顧客へ適切なメッセージをより迅速に届けられるようになります。また、デジタルフォームの事前入力や電子署名機能などを使用して、シームレスなオンボーディング体験を手軽に簡単に作成できます。
- 効率の向上
ビジネスユーザーのエンパワメント
一元化された CCM ソリューションを使用すれば、ビジネスユーザーがコンテンツを作成、編集、管理できるようになり、IT 部門への依存を低減できます。
部門サイロとデジタルサイロを排除
多くの組織には、通常、印刷物、モバイル、メール、ウェブなど、チャネル別にチームが存在します。そのため、運用の非効率性、高コスト、不整合や規制上のリスクを引き起こす可能性があります。一元化された CCM インフラストラクチャを導入すれば、変更がさまざまなタッチポイントやチャネルに簡単に反映されるようになり、効率が向上します。

デジタル変革を加速させよう
金融サービス、保険、公益事業、行政機関など、多くの従来型の業界には、重要なレガシー IT テクノロジーの複雑なインフラストラクチャが存在します。15~20年前に、印刷物の出力をベースに開発された既存のシステムです。今日、CCM ソリューションと既存のコアシステムを統合するのは、最も重要なことであり、それにより、単一の使いやすいインターフェイスを通じてシームレスなクロスチャネル体験を可能にします。
最先端の CCM ソリューションでは、既存のテンプレートや顧客データを活用し、すべてのチャネルで高度にパーソナライズされたコミュニケーションを作成することができます。
4. リスクを軽減
コンテンツ管理者は、コンプライアンス要件を邪魔なものと見なすことがよくあります。これは、コンプライアンスをコミュニケーションの設計と開発に統合することで克服できます。一元化された CCM ソリューションにより、次のことが可能となります。
コラボレーション
コンテンツの開発プロセス全体で、コンプライアンス、法務、事業部門の各チームがコラボレーションできることで、不満が軽減され、市場投入までの時間が短縮されます。
全体像
ミスを低減するために、コンプライアンスチームは紙、ウェブページ、モバイルアプリなど、あらゆる形式のコミュニケーションパッケージ全体を見る必要があります。そうすることで、顧客と同じ視点からコミュニケーションの見え方を確認し、分析することができます。
コントロールの向上
コンプライアンス担当者には、規制に関する用語の管理、追跡、監査、承認を迅速かつ容易に行える能力が必要です。最新の CCM ソリューションでは、1か所で変更を加え、選択したすべての場所に正しく適用することができます。必要に応じて特定のコンテンツブロックをロックし、規制が関係する文言を保護することも可能です。
CCM の 4 つの基本
ここまでは、企業が CX 戦略の一環として一元的な CCM ソリューションを導入することのメリットを紹介してきました。ただ、CCM プラットフォームの評価時にビジネスリーダーはどのような点を考慮すべきでしょうか?どうすれば自社ビジネスに適したソリューションを確実に選定することができるでしょうか。このセクションでは、CCM ソリューションを評価する際に考慮すべき4つの重要な点を紹介します。
- 一元化されたプラットフォームに投資
今日、顧客の嗜好と急速に変化するコミュニケーション環境により、企業はカスタマーコミュニケーションの管理方法の再考を求められています。企業の抱える顧客、チャネル、製品やサービスが多いほど、すべてを管理できるようにするため、レガシーシステムや最新のシステムが多数存在する可能性が高くなります。
その結果、ソフトウェア、ハードウェアやビジネスルールのインフラストラクチャに関して大幅なメンテナンスが必要となります。カスタマーコミュニケーション管理に全体的な戦略が欠けていることも少なくありません。
この文書の前半で説明したように、一元化された CCM プラットフォームに投資することで、企業はいくつかの利点を享受できます。
ただ、テクノロジーの移行は複雑な作業になる可能性があるため、実証済みの方法論と幅広い移行経験を持つ CCM プロバイダーを選択することが重要となります。
- シームレスな GUI の重要性
ユーザーエクスペリエンスも重要な検討事項のひとつです。シームレスなグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)は、従業員のオンボーディングを促進するだけでなく、不満を減らし、ユーザーの効率を高めるのに役立ちます。
- ビジネスユーザーを支援
多くの企業がデジタルを使いこなす必要性を認識し、顧客へのサービス提供方法を再考しています。システム開発が IT 部門のみで完結していた時代には、同部門がすべてを主導し、コントロールを維持していました。ただ、ビジネスがデジタル化するにつれ、ビジネスユーザーが進め方を指示する機会が多くなり、一方で、IT 部門は依然として実際に手を動かす役割として機能しています。
部門横断的な従業員間のコラボレーションの重要性は増加しています。関連性が高く、パーソナライズされたコミュニケーションを作成し提供するためには、すべての利害関係者をつなぐ承認ワークフローを使用して、ビジネスユーザーがコミュニケーションを自在に操作できるような環境が必要です。
変更を IT 部門に頼るのではなく、ビジネスユーザーがコンテンツを作成、編集、管理できる CCM プラットフォームを選びましょう。大規模な組織では、毎月、(おそらく数千点のドキュメントテンプレートに基づく)顧客に対して数百万件のコミュニケーションを発信しています。こうしたドキュメントテンプレートの変更管理にはコストと時間がかかるため、こうした作業を事業部門で行えるようにすれば、明らかにメリットとなります。
- アーキテクチャの重要性
カスタマーコミュニケーション管理における最大の課題の1つに、包括的な戦略の欠如があります。歴史のある企業であるほど、レガシーと最新のテクノロジープラットフォームが混在している可能性が高くなります。新しいコミュニケーション技術の急速な導入により、企業はこうしたチャネルへの出力を処理するために単独のツールを採用するようになりました。また、多くの組織にとって、合併や買収により管理すべき IT ツールやプラットフォームの数が増加しています。
単一の CCM プラットフォームに移行することで、さまざまな事業部門間でコミュニケーションを作成・配信する際にも一貫性が確保されます。さらに、事業部門全体でプロセスを標準化できるようになります。
アーキテクチャと統合に関しては、以下の4つの点を考慮することが重要です。
- 1つのプラットフォームに制御を集約
シームレスな GUI の重要性については前述しました。これは、ユーザビリティの観点からも、統合の観点からも非常に重要です。主要な CCM ソリューションの多くは買収により取得した複数のアプリケーションや製品で構成されています。その結果、統合や IT サポートを難しくするテクノロジーの混乱が生じがちです。
- 柔軟性
現在のデプロイニーズと将来の要件を満たすプラットフォームを探しましょう。オンプレミス、クラウド、これら両方を合わせたハイブリッド、またはホスト型マネージドサービスとしてソリューションを展開するなどの選択肢があります。
- 統合とオープンテクノロジー
顧客とのコミュニケーションは、ビジネスのほぼあらゆる部分に影響を及ぼします。すべてのチャネルに対してパーソナライズされたコミュニケーションを作成するには、CCM ソリューションを以下のようなさまざまなテクノロジーとシームレスに統合する必要があります。
- 基幹システム(CRM、ERP、ECM など)
- 業務系システム(コアバンキング、保険請求/請求、引受など)
- レガシーシステム(トランザクションシステム、自社開発アプリケーション、生産管理など)
- 周辺テクノロジー(BI および BA ツール、アーカイブシステム、モバイルアプリケーションなど)
- 次世代コミュニケーションの実現
短期・長期の目標に沿ったテクノロジーを実装すれば、進化するコミュニケーションの要件に合わせてテクノロジーを確実に進化させられるようになります。多くの CCM ソリューションプロバイダーは、最新のトレンドに対応しており、企業が新しいチャネルで配信されるコミュニケーションを使用して、迅速に市場投入できるようにする最新の CCM プラットフォームを提供しています。
- パーソナライゼーション:データを活用した顧客ロイヤルティの構築
多くの組織には金脈とも呼べる貴重なデータが眠っており、顧客に関する何十億ものデータポイントにアクセスすることが可能です。こうしたデータポイントは、高度にコンテキスト化された方法でエンゲージメントを実現するために活用できます。
企業の94%は、パーソナライゼーションが現在と将来の成功にとって不可欠であることに同意しています。しかし、ほぼ半数は、ITの制約(47%)とレガシーテクノロジー(46%)が、パーソナライズ施策に対する「主要な障壁」であると述べています(『The Realities of Personalisation Report』Econsultancy & Monetate)。
パーソナライズされたコミュニケーション体験を提供するための鍵は、これを支える基盤となるテクノロジーとその統合能力にあります。CCM ソリューションは、既存のデータエコシステムのどこからでもデータを取り込め、高度にパーソナライズされ、適切でタイムリーなクロスチャネルコミュニケーションを実現できるものでなければなりません。
購買時の注意点 : 一部の CCM テクノロジーでは、データを活用する前に、データの抽出や操作、 XML ファイルへの読み込みが必要となり、貴重な時間とリソースを浪費することになりかねません。CCM ソリューションを評価する際には、自社の統合ニーズと CX 面での目標を確実に満たせるものを選定できるよう、概念実証が重要となります。
カスタマーコミュニケーション管理の始め方
選択肢として非常に多数の CCM ツールが存在するため、どのソリューションが自社に最適かを判断するのが難しい場合もあります。
適切なソリューションを導入できるよう、戦略的なアプローチを取ることをお勧めします。このアプローチには、綿密な計画と包括的な要件収集を行うこと含めましょう。また、方向性を同じくする組織と経営陣に支えられた評価チームの存在も不可欠となります。
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